Tokyo イベント

REPORT / ESIN (2015/2/16-2/29)

2015/03/05

参加費30万円。平日10日間拘束。募集期間もほとんどなし。漠然とした前情報しかないし、明確なアウトプットも提示されていない。

アーネスト・シャクルトンが「南極探検隊募集」で書いた伝説の求人広告のような出だしですが、当然現実は甘くはなく、直前キャンセルも相次ぎ、24人の枠に対して最後は結局4人だけの参加者。でも、その体験は参加した4人にとって、一生の宝と言っても過言ではない時間となった。そんな奇跡的な時間がESINプロジェクトvol.1。2015年2月16日〜27日@メイカーズベース。「クリエイティブ」という言葉や概念に向き合った10日間。

一世を風靡したTOMATOのメンバーが主体であるプロジェクトESIN。その主体に関する情報と共に、事前にわかっていたことはただ一つ。「プロジェクトは生きもの。どんなプロセスで進むかわからないから、事前に伝えられることはない。」つまり、「伝えられることはない」ということがわかっていただけ。いろいろなリスクを参加者に問うプロジェクトにも関わらず、事前に伝えられることがないなんて。昨年8月からスタートした主体となるメンバーとの話の中で、直感的に面白いということは感じていた。会うメンバーみんな面白い人だったから。でもそれは、自分が会っているから感じること。会ってもいない人に、

「高いお金出して、会社休んで参加してみなよ!それは最高の経験だよっ!」

って自信をもっていえるのわけもなく。その後に続く会話の中で、「どの辺が?」と聞かれても答えられないし。正直、面白くなるんだろうな、と感じつつも、事前に強く周囲に薦めることはできなかった。それでも、幸いなことに(という言葉が適切な気がする)4人の参加者が直感で集まった。東京から、名古屋から、札幌から、直感的に面白くなると感じた人たち(結果的にそれは合ってた)。ベクトルの向きは違えど、強くて熱いものを心に秘めている。UNDER WORLDの流れから知っていたり、所属する会社の意向に伴っていたり。きっかけは様々だけど皆、これから先の自分の未来に可能性を感じている人しかいなかった。

迎えた初日、2月16日月曜日。対峙するは3人の講師。モナシュ大学教授、ジョン・ワーウィッカー。カッセル芸術大学学部長、ジョエル・バウマン。リボネシアのディレクター、吉川徹。10時過ぎにゆっくりとジョンが口を開くと、魔法の時間が始まった。

ここから先、10日間の細かい流れを、時系列でおって伝えても仕方がない。簡単に言えば、参加者に複数の課題が出て、課題に対する作品を作り、皆で講評。その繰り返し、ただそれだけ。そこを伝えてもプロジェクトの魅力は伝わらない。凄いのはそのプロセスの中で行われるフィードバックだったのだ。

最初から、

「対話が大切だ。とことん対話をしよう。」

ということで、始まっていたが、ここまで対話をするとは。課題の始まりにも、途中にも、最後にも、とにかく頻繁に行われたフィードバック。参加者が一生懸命に取り組む。そのアウトプットが出来上がるプロセスに辿った試行や思考をトコトン聞く。参加者がよいと感じているものよりも、その横の(参加者が)失敗した(と考える)アウトプットに目を向ける。そのプロセスや失敗から、ジョンやジョエル、徹さんがクリエイティブの芽を見つける。

「トモアキ!これはいいぞ、これはクリエイティブだ。」

わざと、捻くれて発言しているのではない。心の底からそれがクリエイティブだと考え、それを参加者に伝える。しかもこれで終わらない。

「これは例えば、こんな風に発展させることができる。」

と言いながらGoogleで検索し、みたこともない、でも素晴らしいクリエイティブなアウトプットを多数紹介する。そのアウトプットをみて、参加者には自発的に取り組みたい次の課題ができる…。その繰り返し。だから1つの課題に取り組むと、なぜか終わったときに
取り組みたくて仕方がない課題が増えてる。つまり、このプロジェクトは、

①自分だけでは絶対に気づかなかった「一流が持つ視点」に触れる
②その視点が「自身のプロセスや失敗」から発生してるから理解しやすい
③更に、「視点の先の成功例」も示してくれるから、道が続いて見える

という特徴を持った、極上のクリエイティブ・コーチングだ。しかも複数の課題が並列しながら進むから、セルフ・コネクティング・ドットな体験が短期間で多数起こる。与えられる課題自体も面白く、多岐に渡るから、それ自体に取り組むことだけでも思考が深まる。更に、一流が選び、重要と考える思考や歴史についての講義がふんだんに鏤められてくる。全ては、様々な経験に向き合い、今に至っている一流だからできること。所属する会社やブランドの名前ではなくて、自分の力で勝負を繰り返してきた本当の一流だからできること。つまりESINにしかできないこと。

センスを磨くというのはつまり、「一流と接して、その視点を盗むこと」。ものをつくるプロセスを分けて考えたとき、人間ができる「ひとつひとつの行動」に大差はない。考える。描く。塗る。撮る。切る。つける。離す。積む。そんなプロセスの連続。多少の差はあるけれど、誰でもできるし、誰でもわかる。それなのに「ひとつひとつの行動」を積み重ねた末に辿り着くアウトプットには、大きな差がつく。なぜなら「ひとつの行動」のアウトプットを捉える視点が違うから。一流は、

・そもそも、よいアウトプットの「到達点」をたくさん知っている
・また、よいアウトプットへと繋がる「道」をたくさん知っている
・更に道の途中、到達点への方向を指し示す「標識」を知っている

のだ。そして、

・標識を知っているから、「この失敗は、こういう視点でみると面白い」と見つけられる
・道程を知っているから、「失敗と捉えていた地点から、こんな風にチャレンジするとよい」と伝えられる
・到達点を知っているから、チャレンジの先にある成功イメージ、そしてモチーベションを与えることができる

そうやって一流から受け取った「到達点」や「道程」や「標識」に関するフィードバックが、「ひとつの行動」を変える。その連続として「ひとつひとつの行動」の積み重ねの結果が大きく変わるのだ。10日間で「ひとつひとつの行動」までは辿り着かない。だから目に見える大きな成果を説明するのは難しい。でも、「ひとつの行動」を変えるための視点を一流から盗んだ参加者4名はきっと、これからの取り組みの中で大きな成果を残していく筈。むしろ、残してもらわないと困る。これだけ良い経験をしたのだから。センスを磨くというのはつまり、「一流と接して、その視点を盗むこと」。次回は絶対、僕もどっぷり参加したいと感じた10日間でした。ほんと、羨ましいなあ。

Makers'
松田